・オープンしてから当然のように気付かされる無知の嵐

いくら安いお店でもお客さんが来ないことには何も始まらない。まず幾ら人通りがあろうと、そこは雑居ビルの最上階。それに繁華街ではなく住宅街なので通る人は別にバーなんて求めてない人が大半。ましてや外から中が見えない得体の知れないお店。自分の見立て以上に如何に立地が悪いかということにオープンしてから気付かされました。でもそれは安いお家賃なのだし仕方ない。とにかくまずここに店があるという知ってもらわないといけない!そう思いまず自分は何をしたか?チラシを印刷し辺りの商店街店舗に配って回ることでした。(これは今改めて思い返すと、恥ずかしい記憶です。)店自体は商店街のすぐ傍でしたから、介護の夜勤明け、昼間の商店街へ繰り出し、ペット屋さん、ブティック、花屋さん、魚屋さんなんかに『バーをオープンしたので是非と』配って回りました。確か40枚、50枚ほど配ったような気がします。さすがにこれだけ配ったら何人かきてくれるだろうそんな藁にも縋るような気持ちだったと思います。またその日も誰もお客さんは見えず。24時に店を閉め、夜な夜な住宅街ポスティングして帰った晩もありました。当然そんなのを見て店にお客さんは来ませんでした。

はじめて来たお客さんは、この辺りに最近派遣できたと言う自分よりも少し年上のお客さんでした。格安の看板が目に止まり来てくれたようでした。メニューからハイボールを選び、フードメニューを注文してくださいました。そのお客さんは基本、自宅でたまーに安い居酒屋で飲む感じの方で普段はバーには行かないだけど安いから来てみてんだと仰ってました。はじめてのお客さんで勿論、緊張はしましたが、1人でやっている以上、緊張している様子をなるべく感じさせないように自然に接客しようと心がけました。フランクな方で喋りやすく、自分に自信をつけるためには一番のお客さんでした。自分の想定ではこういうお客さんが来てくれて、その積み重ねていくことが理想ではありました。しかしそのお客さんが帰ってしまうとまた誰も来ない。このままだとさっきのお客さん1人のためのお店になってしまう。この状況は早急にどうにかせねばならない。

2、3日して週末に差し掛かり、また看板を見て男女のカップルのお客さんが見えました。そのお二人はこの雑居ビルの色んなお店に顔を出しているようで『このビルの大御所館にはちゃんと挨拶いった?』と聞かれました。自分はこの店舗のお隣のお店、スナックには挨拶には行ったのですが、他の店には回っていませんでした。『大御所のとこの挨拶は絶対いかなあかん。行ったらお客さん連れて店来てくれるんやから。そうやって顔を広げていかないと知らん店には来てくれへんよ』なるほどと自分は思いました。大御所のお店だけ挨拶するのでは、他の店にも挨拶に行かないと角が立つのでは?そう考え、その翌日からこの雑居ビルに入っている全店舗に挨拶して回ることにしました。